情報銀行の基礎知識

情報銀行の提供サービスとは。5つの実証実験から検証

情報銀行は、まだサービスインしている企業が少ないこともあり、どのようなサービスが提供されるのか、どのようなビジネスモデルになるのか見えていない部分があります。そこで、総務省の「情報信託機能活用促進事業」に係る公募によって実施された実証実験を紹介し、サービス内容を探っていきたいと思います。

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総務省の「情報信託機能活用促進事業」について

総務省は平成30年度予算で、「情報信託機能活用促進事業」に係る提案の公募を行いました。情報銀行のモデルケースとなるような事業に対して予算を出して社会実験を行ったと考えてください。この公募で採択された5つの実証実験を紹介しながら、情報銀行のサービスについて考えていきたいと思います。

 

①一般社団法人おもてなしICT協議会

最初に紹介するのは、一般社団法人おもてなしICT協議会が主となり、広島県、高松市、さいたま市、会津若松市、沖縄県、慶応義塾大学、日本アーバンスポーツ支援協議会と共同で行った実証です。まちづくり(ヘルスケア)分野では、まちづくりのコミュニティの参加(1,000名)による生活に係わる情報や行動データ、購買データを収集して、OneToOneによるパーソナルデータ利活用モデルの構築。スポーツ・観光分野では、情報仲介機能の手順(利用契約により第三者提供/利用目的明示)でパーソナルデータを取得したFISE広島世界大会における3万人のデータを利活用してファンクラブ化によるファンサービスの提供と新しいスポーツスポンサーモデルの構築を行いました。

 

②株式会社日立製作所

続いては、日立製作所が行った実証です。日立製作所の社員200名を対象に、各家庭に設置する電力センサから得られる「電力データ」、個人が装着するリストバンド型センサから得られる「健康データ」、日立製作所が保有する「所得データ」、個人本人が入力する「基本データ」を活用し、以下のモデルケースにおけるデータ活用の有効性を検証しました。

 

  • 保有家電の特定に基づく、家電向け保険・サービス開発の可能性検証
  • 個人の在宅率の把握に基づく、再配達の削減につながる宅配ルート設計の可能性検証
  • 生活プロファイルに基づく、個人の関心に合ったWeb広告配信の可能性検証

この実証では、情報提供先として東京海上日動火災保険、日本郵便、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムが参加しています。

 

③株式会社JTB

JTBとJTBコミュニケーションデザイン、大日本印刷株式会社、上野観光連盟などが参加した旅行会社情報信託機能を活用した「次世代型トラベルエージェント」と題した実証です。旅行者のデータ活用判断支援・サービスマッチング・共通観光パスなどの機能を搭載した次世代型トラベルエージェントアプリの提供によって、スマートな旅行体験を実現し、サービス事業者へのデータ活用ダッシュボード機能の提供により、人口減少時代における観光サービスの効率化と旅行者との関係構築を支援することを目的としています。

 

④中部電力株式会社

中部電力、大日本印刷株式会社、キュレーションズ株式会社、豊田市役所、豊田まちづくり株式会社、株式会社山信商店が参加した地域型情報銀行に関する実証です。生活者のパーソナルデータ(会員情報や行政データなど)および日常の生活データ(体重などの身体情報や家庭内の電力使用量などのセンサーデータ)を地域型情報銀行が集約・管理し安全安心に地域内で流通させることで、地域サービスの効率化・高度化を実現し、生活者の日常生活の不便を解消すると共に地域内の消費活性を図ることを目的としています。例えば、体組成計データ、体型に関する悩みを考慮した、食品・雑貨などのオファーをしたり、最適な広告を出稿したりすることを考えているようです。

 

⑤株式会社三井住友銀行

三井住友銀行と日本総合研究所が行った情報信託機能を用いた個人起点での医療データ利活用実証です。以下が具体的内容になります。

 

  • 情報銀行が要配慮個人情報である医療データを取扱う際の、法務面・システム面・ユーザー面(利便性や意識)・ビジネスモデル面等についての要件を整理。
  • 様々な医療機関等から提供される医療データを、デジタル化して取り込み、安心・安全に管理できるPDS機能の提供
  • PDSに統合・蓄積された個人の医療データを、データ利活用事業者に提供することで、個人に便益を提供するモデルの検討

 

OneToOneマーケティング

ご紹介したように、さまざまな分野の実証が行われていますが、共通して見えてくるのがOneToOneマーケティングです。OneToOneマーケティングとは、その名の通り、一人ひとりの行動や趣向に合わせたマーケティング活動のことです。情報銀行によりパーソナルデータを管理し、利活用したい企業に提供することで、より精度の高いOneToOneマーケティングが実施できるようになると考えられています。

 

例えば、日立製作所や中部電力の実証では電力データを利活用しています。電気は在宅時必ず使用しますので、ライフサイクルや家族構成など結構な情報が推察できるでしょう(※当然個人情報とは紐づいていません)。帰宅時に最寄りのスーパーのクーポンが配信されるなどさまざまなOneToOneマーケティングが考えられます。

 

ヘルスケアデータも貴重な情報です。健康食品などはもちろん、フィットネス、スポーツ用品、保険などさまざまな業界でより精度の高いOneToOneマーケティングを実現できるはずです。

 

情報銀行利用者が享受できる本質的なメリット

OneToOneマーケティングは、情報銀行利用者にとってもメリットはありますが、どちらかといえば利活用する企業にメリットのあることです。情報銀行利用者はパーソナルデータを預託し、情報銀行を通じて企業が利活用することでインセンティブを得ることができますが、より本質的なメリットも必要になってくるでしょう。

 

例えば、ヘルスケアデータを提供し、ある一定の基準を満たすことができれば、保険料が下がるなど、工夫やコラボレーション次第でさまざまな可能性が見えてきます。今後、各情報銀行がサービスインし、健全な発展を遂げることができれば、私たちの生活はより便利になっていくのではないでしょうか。

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情報銀行ナビ編集部です。情報銀行関連のイベント等を多数主催してきた株式会社インロビの編集者が、情報銀行の基礎知識や最新ニュースを紹介します。